太陽は美しい
太陽が沈んだ後には 月が美しい
太陽も月も沈んだ後には 星のまたたきが美しい
太陽も月もなく星もない闇の中では、一本のローソ
クの火がこよなく美しい
ローソクの火も消えた闇の中では 鈴虫の音の海がある
その音の海に 自己自身の声を聞く
わたくしは ここで夢を起こそうと思う
(『聖老人』夢起こしー地場社会原論)
「特集 山尾三省の世界」、生誕70年
ふと、書店で目に飛び込んできた見出しだった。
山尾三省さんの世界を作曲家の藤枝守さん、能楽師の泉雅一郎さんが新作謡を公演してくださるという機会をえて、すぐのことだった。
こういう本との出逢いは嬉しいものである。
「水の流れている森」
森は
土と樹々をかかえて
永く沈黙しつつ 生きている
人は その森に換える
森は
ひとつの闇であり
慈悲であええる
人は その森に帰る
森の底には
水が流れている
その水もまた 森である
人は そこに帰る その森に帰る
(『水が流れている』森について)
『屋久島の山中に一人の聖老人が立っている
齢およそ七千二百年という』から、始まる一連の詩を、
どのように、藤枝守氏が作曲し、泉雅一郎氏他4名の能楽師の方々が、
いかように、謡ってくださるのだろうか。
4月4日の土曜日、桜咲く季節に、太古からの縄文杉の声、生命の原点をきくことができるのが、とても、楽しみである。
どうぞ、皆様も、是非、ご一緒に、『聖老人』の世界にお越しいただければと、春の【月の舞台】で、お待ち申し上げております。
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★プロフィール
山尾 三省(やまお さんせい)
1938年10月11日 - 2001年8月28日 詩人。東京都千代田区生まれ。
東京都立日比谷高等学校を経て、早稲田大学西洋哲学科を中退し、1957年にナナオサカキや長沢哲夫らとともに、対抗文化コミューン運動「部族」を起こす。1973年、家族と、インド、ネパールへ1年間の巡礼の旅に出る。1975年、東京・荻窪の「ほびっと村」の創設に参加する。1977年に、屋久島の白川山(しらこやま)に一家で移住。「耕し、試作し、祈る」生活をはじめる。以降、白川山の里づくりをはじめ、田畑を耕し、詩の創作を中心とする執筆活動の日々を屋久島で送る。「地球即地域、地域即地球」というコンセプトをもつ。2001年8月28日、屋久島にて胃癌のため死去。
作曲/藤枝守
1955年生まれ。カルフォルニア大学サンディエゴ校音楽部博士課程修了。作曲を湯浅譲二、モートン展フェルドマンらに師事。合衆国滞在中にハリー・パーチ、ルー・ハリソンに影響されながら、純正調によるあらたな音律の方向を模索。また、コンピュータを援用したパフォーマンスやサウンド・インスタレーション、ジャンルを超えたさまざまなコラボレーションなどを行っている。近年は、植物の生態のデータに基づく『植物文様』という作曲シリーズを展開。
また、音律の可能性を追求する合奏「モノフォニー・コンソート」を組織。
2000年日本文化藝術財団から奨学金が受給される。九州大学大学院芸術工学院教授。
出演・監修/泉 雅一郎
1954年生まれ。観世流シテ方。故大槻秀夫・大槻文蔵に師事。観世会・銕先
会会員、大槻清韻会評議員。重要無形文化財総合指定保持者認定。