◇「月の舞台」趣旨
旧家に代々受け継がれてきた能舞台の継承と再生を図るべく誕生した「月の舞台」は、伝統と現代が共存する舞台芸術の優れた精華を披露するとともに、併設された介護付有料老人ホームやデイサービス施設との連携により芸術文化と医療福祉を融合させ、未来につながるアートと地域社会の新しい出会いを醸成していく。
◇作品あらすじ
吃音に苦しむ3人の男。カ行とタ行がとりわけ吃るため、電話口で自分の名字を言えない武谷。食堂で、食べたい「カレーライス」をどうしても発音できず、オヤコ丼ばかり注文する杉雄。仕事で各家庭を訪問する度、社名が言えないために不審人物としてまちがわれる中田。3人は日暮里の吃音矯正所で知り合い、矯正サークルをつくって吃音治療に励む。1964年6月なかばのある日、3人は渋谷の名曲喫茶で日頃の体験を話し合う。なぜ自分たちは吃ってしまうのか、その原因は何なのか、それを克服するにはどのようにすればいいのか。劣等感、言葉に対する自信の喪失、職階性意識、喧々囂々の議論はやがて60年代安保、ゼネスト、果ては出生の問題にまで遡って行く。
◇劇団黒テント
1970年代から80年代にかけて黒テントが掲げた《物語る演劇》。その目的は、「演劇の可能性を《演ずること》だけでなく、前近代の語り物等が持っていた《物語り・伝え・広める》ことの中に再発見しよう」というものでした。落語や講談のように、役者を《人物》や《演技》の背後に隠してしまうのではなく、すべてがそこから発する能動的な《語り手》として演劇という表現の最前面に押し出すことにより、近代演劇が置き忘れてきてしまった演劇のもともとの面白さが再発見できるのではないかという試みです。この手法により、小説や詩などに大幅に手を加えることなく演劇化することが可能となったのです。
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